2026. 7. 10 令和の労使関係は「対立」から「協働」へ――会社を強くする対話の技術
令和7(2025)年労使間の交渉等に関する実態調査 結果の概況(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/18-r07gaiyou.html
「労使関係」という言葉、皆さんはどんなイメージをお持ちですか?
もしかすると、経営者と組合がテーブルを挟んで厳しくやり合う……そんな少し緊張感のある風景を想像されるかもしれません。
でも、令和7年に行われた最新の調査結果を見ると、今の時代の労使関係は、そんな「対立の時代」から大きく変わっていることがわかります。
なんと約9割の労働組合が、会社との関係を「安定的」だと感じています。
時代の変化とともに、私たち経営者の「組合や従業員との付き合い方」も、少しアップデートが必要かもしれません。
今回は、経営者の皆様に向けて、現場ですぐに活かせる「会社を強くする対話のヒント」をお話しします。
1. 「対話」はコストじゃなくて、最強の経営インフラです
労働組合や従業員との話し合いを「手間のかかるコスト」と捉えるのは、非常にもったいないことです。
これからの時代、対話は組織のモヤモヤを早く見つけて、改善していくための「経営インフラ」だと捉え直してみませんか。
調査では、労働争議が起きなかった理由のトップが「対立した案件がなかった(55.9%)」、次いで「話合いで解決した(36.1%)」となっています。
つまり、多くの現場では「何かあれば話し合おう」という健全な文化がすでに育ちつつあるということです。
今の良好な関係を「当たり前」と過信せず、いかにこの「話し合える関係」を維持し、強めていくか。
ここが、強い会社をつくる一番の近道です。
2. 「なぜその金額なの?」に答える準備はできていますか?
今回の調査で目立ったのは、賃金や退職金についての交渉が活発化しているという事実です。
過去3年間で、この分野に関する交渉を行った組合は76.8%と非常に高く、実際に賃金額の改定が行われたケースも38.8%にのぼります。
もちろん、賃上げは経営にとって大きな決断ですよね。
ただ、従業員が一番気にしているのは、単なる金額の多寡だけではありません。
「なぜその金額なのか」「どういう考え方でこの制度を作ったのか」という納得感です。
実際に3分の1の組織で賃金制度自体の見直しが行われています。
制度の根拠を説明し、納得してもらうプロセスこそが、信頼関係の土台になります。
今のうちに、自社の人事制度が今の時代に合っているか、一度見直してみるのも良いかもしれません。
3. 今日からできる!3つのアクション
「具体的に何をすればいいの?」という方のために、今日から職場で試せる、いわゆる「話し合いの場(労使協議会)」でのアクションを3つまとめました。
- 「話し合いの場」を、単なる報告の場にしない
団体交渉のような堅苦しい場ではなく、日頃から「最近、仕事で困っていることはない?」と聞ける「話し合いの場」を大切にしてください。
調査でも、団体交渉を行わなかった組合の4分の1が「労使協議機関で話合いができたから」と回答しています。
まずは、「今日は考えていることを教えてくれてありがとう」の一言を増やすだけで、現場の空気は変わります。 - 非正規雇用の方々の「声」を拾い上げる
今やパートや有期契約の方にも約4割の組合で加入資格が認められており、同一労働同一賃金に関する交渉も4分の1の現場で行われています。
まずは「今の業務で、不合理に感じることはないか?」と直接聞いてみてください。
彼らの帰属意識を高めることは、結果として離職防止や生産性向上という、経営に直結するメリットをもたらします。 - 「対話のハードル」を下げておく
職場環境の改善を求める交渉は6割と高い水準です。
対立してから話し合うのではなく、何でもない時にこそ雑談を交わしておく。
その積み重ねが、いざという時の大きなトラブルを未然に防ぎます。
結び――会社は「人」で動く、だからこそ対話を
今回の調査結果は、多くの現場で労使が協力して組織を良くしようという、前向きな空気があることを示しています。
経営者の皆様にとって、労働組合や従業員と向き合う時間は、決して削られるものではなく、未来のために投資する「経営インフラ」です。
「また相談してみようかな」「この話なら、まずはあそこで話してみよう」そう思ってもらえる関係性が、今の時代における「強い会社」の形なのかもしれません。
まずは明日、職場で少しだけ「対話」を意識してみてください。



