2026. 5. 29 歯の痛みを放置していませんか?―その「小さな我慢」が会社の利益を削っています

「第12回 協会けんぽ調査研究フォーラム」2026年5月13日https://www.kyoukaikenpo.or.jp/disclosure/statistics/forum/no12

6月4日から6月10日まで「歯と口の健康週間」になります。

歯と口の健康週間|厚生労働省

「最近、どうも歯の調子が悪いけれど、仕事が忙しいから後回しにしよう」

「社員が歯医者に通うために仕事を抜けるのは、現場が回らなくなるから困る」

会社のオフィスや現場で、このような光景は見られないでしょうか。

経営者の皆様にとって、日々の忙しさの中で「歯の治療」や「お口のケア」は、どうしても個人の私生活の領域であり、後回しにされがちな問題かもしれません 。

しかし、最新の調査研究によって、この「お口の中の放置」こそが、企業の利益をじわじわと蝕む「見えない損失」につながっていることが明らかになりました 。

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これからの労働力不足の時代、社員の皆様に長く元気に活躍してもらうことは、事業を守るための絶対条件です 。

今回は、これまで見過ごされがちだった「歯の健康」が、なぜ今、企業の業績を左右する重大な経営課題となっているのか、そして経営者として今すぐ取り組むべき具体的な対策について解説します 。

1. 職場の「歯磨き環境」と「受診の促し」が、これからの会社を支える

企業が将来にわたって安定して成長していくためには、職場において「歯の定期健診を勧めること」と「昼食後に歯を磨きやすい環境を整えること」を、新しい年中行事や社内ルールとして導入することが極めて効果的です 。

歯の健康づくりは、単なる個人のマナーや私生活の地味な問題ではありません 。

会社がほんの少しきっかけを作り、背中を押してあげるだけで、従業員の行動は驚くほど変わります 。

その結果として、社員の集中力が高まって仕事の能率が上がり、将来的な会社の医療費負担(社会保険料の負担)を抑えることにもつながるのです 。

大きな設備投資や予算をかけずとも、今日から始められる「会社の守りを固め、攻めに転じるための投資」として、お口の健康管理に目を向けてみませんか 。

2. 働き盛りの6割が抱える不調が、大病を引き起こす引き金に

なぜ、会社が従業員の「歯」にまで気を配らなければならないのでしょうか。

その理由は、働き盛りである従業員の多くが自覚のないままお口の不調を抱えており、それが将来、会社を揺るがすような大病や医療費の高騰を引き起こす中心原因になっているからです 。

全国健康保険協会(協会けんぽ)が実施した最新の調査(2026年5月発表)によると、40歳から64歳までの働き盛り世代において、虫歯などの「治療が必要な歯」を残したまま放置している人の割合は、なんと61%に達していることが分かりました 。

実に10人中6人以上の社員が、お口の中に爆弾を抱えたまま仕事をしている状態なのです 。

「たかが虫歯や歯周病」と侮ることはできません。

医療データの詳細な分析により、歯の病気は、将来的に高額な医療費がかかるような「糖尿病」や「高血圧」といった重い病気と深く結びついていることが判明しました 。

歯周病をおろそかにしていると、そこから体全体の健康が崩れ、生活習慣病がドミノ倒しのように悪化していくのです 。

特に女性の従業員においては、若い頃から60代前半に至るまで、一貫してお口の健康維持が体全体の健康を保つための重要な鍵となっていることも分かっています 。

歯の痛みを我慢しながら仕事をしていれば、当然、集中力は落ち、普段ならあり得ないミスや能率の低下を招きます 。

完全に仕事を休むわけではないため、経営者からは見えにくい損失ですが、これが毎日積み重なることで、会社の利益は確実に削り取られていきます 。

逆に言えば、お口のケアを促して大病を未然に防ぐことは、最も費用対効果の高い、確実なリスク管理であると言えます 。

3. お金をかけずに職場の行動を変える、3つの成功への道筋

では、予算や人員に限りのある中小企業において、具体的にどのようなことから始めればよいのでしょうか。

大がかりな仕組みを作る必要はありません。実際に効果を上げている、身近な3つの事例をご紹介します 。

経営者が「我が社は歯の健康を応援する」と伝える

まずは経営者自らが、朝礼や書面などを通じて「我が社は社員の健康、特に歯の健康を大切にします」と宣言することです 。

調査によると、会社として健康づくりへの取り組みを公に掲げている事業所では、従業員の歯科受診率が明らかに高いことが分かっています 。

「仕事を少し調整してでも、早めに歯医者に行っておこう」と、社員が安心して通院できる心理的な安心感を生み出すことが、何よりの引き金となります 。

一度きりで終わらせず、回数を分けて伝える

社内の掲示板にポスターを1枚貼るだけで終わらせては、日々の業務に追われる社員の耳には届きません 。

社内連絡の手紙に一筆添えたり、定期的なミーティングの際に「最近、歯医者に行っていますか?」と声をかけたりするなど、複数の方法で繰り返し伝えることが大切です 。

伝える回数を増やすという、シンプルで手間のかからない工夫が、中小企業においては非常に高い効果を発揮します 。

気持ちよく歯が磨ける「環境」を整える

お金を補助すること以上に効果的だとされているのが、日々の職場の環境づくりです 。

「昼食後に、気兼ねなくしっかりと歯を磨くことができる手洗い場があること」、そして「歯医者に行くために、少し早く退勤したり時間単位で休みを取ったりしやすい雰囲気があること」です 。

洗面台を清潔に保ち、小さな歯ブラシ置き場を作る、といったわずかな配慮があるだけで、社員の健康に対する意識は日常的に、自然と高まっていきます 。

4. まずは洗面所の見直しと、方針の共有から始めましょう

結論として、経営者の皆様が今すぐ着手すべきことは、自社の健康方針の中に「歯科健診の推奨」を明確に位置づけ、まずは社内の「歯磨き環境」を少しだけ見直してみることです 。

これからの時代、少子高齢化が進み、新しい人材を雇うことはますます難しくなっていきます。

今いる従業員の皆様が、定年を迎えても、あるいはそれを過ぎても、健康で最高のパフォーマンスを発揮し続けてくれる環境を整えることこそが、企業の存続に直結します 。

お口の健康管理は、高価な機械を購入する必要も、複雑な制度設計を一から行う必要もありません 。

経営者の「一言」と、職場の「洗面台の工夫」から始められる、最も身近な防衛策です 。

従業員の皆様が毎日笑顔で、元気に食事をし、集中して仕事に取り組める職場環境づくりを目指して、まずは身近な一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか 。

職場の就業規則や運用のルールに、こうした「通院しやすい雰囲気」を上手に織り込んでいくことが、これからの強い会社を作る基盤となります 。