2026. 4. 17 「人」はコストか、それとも「成長の種」か。~令和8年改訂・人的資本可視化のすすめ~

人的資本可視化指針(改訂版) 2026年3月23日
内閣官房・金融庁・経済産業省

今こそ『人はコスト(費用)』という考え方を捨て、『人は未来の利益を生むための投資先』であると定義し直す時。

深刻な人手不足や生成AIの進展といった激動の時代において、自社の従業員がどのようなスキルを持ち、どう活躍しているかを「見える化(可視化)」することは、もはや大企業だけの義務ではありません。

令和8年に改訂された最新の「人的資本可視化指針」では、これまで曖昧だった「経営戦略と人材戦略をどう結びつけるか」という具体的な手順が明確に示されました。

この指針を羅針盤として活用することで、貴社の「帳簿には載らない底力(無形資産)」を最大化し、持続的な成長を確実なものにできるのです。

今回の改訂内容が重要な理由

理由は3つあります。

理由その1:「やり方」が具体化されたため。

従来の指針は「人を大切にする重要性」の指摘に留まっていました。

しかし、今回の改定では「人的資本への依存・影響」と「人的資本関連のリスク・機会」という2つのステップを間に挟むことで、経営戦略と人材戦略を論理的に結びつける方法が明示されました。

これにより、社長の頭の中にあるビジョンを、具体的に「どんな人が何人必要か」という計画に落とし込みやすくなったのです。

理由その2:財務諸表の限界を補うため

貸借対照表や損益計算書では、人件費は単なる「費用」として処理されてしまいます。

しかし、投資家や銀行、そして求職者は「その会社が将来勝つために、どれだけ質の高い教育投資をしているか」を見ています。

財務諸表には表れない「人の力」を可視化することで、本当の企業価値を伝えることができるようになります。

理由その3:労働市場での「選ばれる力」を高めるため

若手人材を中心に、求職者は「自分のスキルが活かせるか」「経営戦略と人材育成が連動しているか」を鋭くチェックしています。

可視化が進んでいる企業は、新卒・中途ともに採用充足率が高いというデータも出ています。

具体的な取り組み内容

では、具体的に何から始めればよいのでしょうか。

改訂指針が推奨する「4つの基本指標の計測・把握」と「経営戦略と連動させるステップ」を例に挙げます。

・4つの基本指標の計測・把握:

1.従業員数: 事業別・地域別にどこに人がいるかの把握。

2.人件費: 単なる給与だけでなく、研修費などの「投資額」の把握。

3.離職率: 経営者がこの数字をどう捉え、どう改善しようとしているかの背景(文脈)が重要です。

4.エンゲージメント: 従業員の「やる気」や「働きがい」をアンケート等で時系列に追います。

・「経営戦略と連動させるステップ」: 例えば、「3年後に売上を1.5倍にする」という経営目標があるとします。

ステップ1: その目標達成には、どのような専門スキル(例:IT活用能力や熟練の技能承継)が必要か特定します。

ステップ2: 必要な人材像と現在の社員のギャップを分析します。

ステップ3: その差を埋めるために、採用を増やすのか、今の社員を教育(リスキリング)するのか、具体的な投資計画を立てます。

実際に先進企業では、事業モデルの変革に合わせて「キャリア採用の比率」を明確な目標として掲げ、その進捗を公開することで、市場からの信頼を勝ち取っています。

人的資本経営は、100点満点の完成度を求める必要はない。
まずは『できるところから』一歩踏み出すことが肝心です。

今回の指針改訂は、限られた経営資源をどこに集中させるべきか悩む中小企業の皆様にとって、絶好の「経営整理」の機会となります。

「うちの会社にはどんな宝(人材)がいて、その宝をどう磨けば、将来の利益につながるのか」。

この問いに答えるプロセスこそが、人的資本の可視化そのものです。

貴社のビジョンを「数字」と「ストーリー」に変え、社員が輝き、利益が出る組織作りに着手しましょう。

https://www.cas.go.jp/jp/houdou/20260323.html

【これから着手すること】
 ・4つの基本指標の計測・把握
 ・経営戦略と人的可視資本可視化の連動