2026. 4. 20 2027年介護保険法改正の全貌|ケアマネ更新制廃止と「業務禁止」リスク

政府は2026年4月、介護保険法を含む「社会福祉法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。

第221回国会(令和8年特別会)提出法律案|厚生労働省

今回の改正は、令和7年度(2025年度)までの仕組みを大きく変えるもので、4月20日現在、第221回国会(令和8年特別会)の衆議院で審議されているところです。

特に「ケアマネジャーの資格運用」と「地域密着型サービスのあり方」において、経営者が「知らなかった」では済まされない変更が含まれています。

令和7年度との違いを明確にしながら、実務上の重要点を見ていきましょう。

令和9年度、ケアマネジメントの「常識」の変化

今回の改正案における最大の注目点は、ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格更新制の廃止と、それに代わる「継続的な研修受講義務化」および「業務禁止ペナルティ」の導入です。

また、中山間地域等における人員基準の柔軟化(特定地域サービス:注)など、地域の実情に合わせた経営判断が求められるようになります。

 注:「特定地域サービス」とは、中山間・人口減少地域等において、人員配置基準を柔軟化したり、   
    包括的な報酬評価を導入したりできる特例的な介護サービスの類型。

  中山間地域:山間地域(山の多い、いわゆる「山奥」の地域)+
         中間地域(平野部と山間部の中間に位置し、農業が行われているような地域)

  人口減少地域:人口の減少その他の厚生労働省令で定める基準に該当する地域として、都道府県が定めるもの

  その他:離島その他の地域であって厚生労働大臣が定める基準に該当するもの

なぜ今、仕組みを根本から変えるのか

深刻な人手不足と、地域ごとの人口動態の差に対応するためです。

従来の更新制は、5年ごとの負担が大きく離職の一因とも指摘されていました。

国は「更新」という形式的な壁を取り払う一方で、「質の担保」を日常的な研修にシフトさせ、より実践的な能力維持を義務付ける方針に舵を切りました。

また、過疎化が進む地域での事業継続を可能にするため、一律の基準ではない「特例」を設ける必要が生じています。

詳細比較:令和7年度 vs 令和9年度

具体的に何が変わるのか、特に重要な4項目を整理しました。

ケアマネ資格の運用

  令和7年度(現行・継続)

   5年ごとの更新制。更新研修を受講し、有効期間を更新しなければ資格は失効します。

  令和9年度以降(改正案)

   更新制を廃止。一度取得すれば失効しませんが、代わりに「定期的な研修受講」が法律で義務化されます。

ケアマネジャー個人への罰則

  令和7年度(現行・継続)

   更新手続きを忘れると失効しますが、あくまで自己責任としての側面が強い運用です。

  令和9年度以降(改正案)

   正当な理由なく研修を受けない者に対し、知事が「受講命令」を出します。

   従わない場合は、1年以内の業務従事禁止(ペナルティ)が課されます。

事業主(経営者)の義務

  令和7年度(現行・継続)

   職員の研修受講に対する「配慮」が求められる、努力義務的な側面が中心です。

  令和9年度以降(改正案)

   ケアマネに研修を受けさせる「機会を確保する措置」が義務化されます。

   勧告に従わない場合は、是正命令や事業所名の公表の対象となります。

人員・評価基準の柔軟性

  令和7年度(現行・継続)

   全国一律に近い人員基準や報酬体系が適用されています。

  令和9年度以降(改正案)

   「特定地域サービス」が新設されます。

   中山間地域等では、自治体の判断で柔軟な人員配置や包括的な報酬評価が可能になります。

今回の法改正案では、他にも「財務諸表の公開義務化」の進展や「地域包括支援センターの体制整備」など、周辺領域でも多くの動きがあります。

手続き上の「漏らしてはいけない」重要ポイント

ケアマネの「受講管理」は経営者の法的義務へ

法案には「事業者は研修受講の機会を確保する措置を講じなければならない」と明記されました。

これまでは個人の資格管理に任せていた部分も、今後は会社がシフトを調整し、受講時間を確保する義務を負います。

これを怠ると、最悪の場合、事業所名が公表されるリスクがあります。

ケアマネの「業務停止」リスク

もし雇用しているケアマネが研修を拒否し続け、都道府県知事から「業務禁止」を命じられた場合、その期間、その職員は1件も担当を持てません。

これは事業所の収益に直結する死活問題となります。

③ ICT(Information and Communication Technology:情報通信)導入と「処遇改善加算」の連動

令和8年(2026年)6月より、居宅介護支援にも「処遇改善加算(2.1%)」が新設されます。

取得要件には「ケアプランデータ連携システム」の利用が含まれる見込みであり、デジタル化への対応が「加算(=給与)」の前提となります。

今すぐ経営者が取り組むべきこと

今回の改正は、経営者にとって「管理負担の増大」と「柔軟な経営のチャンス」の両面を持っています。

  • 人財管理の徹底:自社のケアマネの研修履歴を可視化し、法定研修を「業務」として組み込む体制を整えてください。
  • 地域特性の再確認:特定地域サービスの類型を活用できる地域か、市町村の条例動向を注視しましょう。
  • DXの推進:ケアプラン連携システムの導入など、令和8年度の加算取得に向けたインフラ整備を急いでください。

    ※DX (Digital Transformation=デジタルトランスフォーメーション):デジタル技術を活用して、
    ビジネスモデルやサービス、組織文化、さらには企業全体のあり方を変革していくこと。

施行は令和9年(2027年)4月が主軸となりますが、準備は今から始まっています。

手続き上の不安や、就業規則への「研修受講義務」の盛り込み方など、準備を進めましょう。

法改正の波を乗りこなし、職員が安心して長く働ける職場づくりを進めていきましょう。