2026. 5. 8 「求人票はチラシじゃない!」~内定を出した瞬間に「契約」が成立する~

マンダイディライト事件 (大津地判令6.12.20
「求人内容と実際の契約の乖離」に対する非常に厳しい判断

中小企業の経営者の皆様。

人手不足が叫ばれる中、ようやく良い人材から応募があり、内定を出せた時の喜びはひとしおですね。

しかし今、ある裁判の判決が業界を震撼させています。

それが「マンダイディライト事件」です。

「いつも通りに求人を出して、面接して、契約書を交わしただけなのに……」と後悔しないために、この事件の教訓を確認しましょう。


1. 「試用期間のある正社員で募集」の落とし穴

「最初の2ヶ月くらい様子を見て、仕事ができそうなら正社員にしよう」と考えて、ハローワークに「正社員の求人 ただし2か月間の試用期間あり。」と届け出ることはありませんか。

今回の事件で裁判所は、次のように判断しました。

「求人票に『正社員』と書いて内定を出した場合、その瞬間に正社員としての契約が成立する」

つまり、後から「最初の2か月は有期契約社員」と労働契約書を提示しても、それは通用しないということです 。

2. 「署名をもらったから大丈夫」も通用しない?

「でも、本人も納得して2か月の有期契約社員の労働契約書に署名したんだからいいじゃないか」と思いますよね。

しかし、裁判所は経営者が思うよりもずっと労働者に寄り添います。

  • 会社から労働者への説明は十分だったか?
  • 労働者にじっくり考える時間を与えたか?
  • 労働者に無理やり署名をさせたのではないか?

これらが厳しく問われます。

入社初日にいきなり「求人票と違う内容」の契約書を見せ、その場で署名させたとしても、それは「本人の本当の同意ではない」とみなされるリスクが高いのです。

3. 中小企業が今から気をつけるべき「3つのポイント」

せっかく採用した社員とトラブルになり、裁判で「無期雇用(正社員)」と認められてしまうと、トラブル期間に対する多額の未払い賃金を支払うなどの大きな損害につながります。

そうならないための対策は以下の3つです。

求人票を「正直」に書く

「試用期間中は契約社員として雇いたい」なら、最初から求人票にそう書く必要があります。

「いい顔」をして募集し、後から条件を下げるのは、やめましょう。

内定を出す「前」に条件を渡す

電話で「合格!」と言う前に、実際の条件を書いた「労働条件通知書」をメールや郵送で送りましょう。

 「この内容でいいですか?」と確認し、納得してもらってから内定を出すのが、最も安全な方法です。

相談できる場を作る

もし条件が変わる場合は、その場ですぐにサインを求めず、「一度持ち帰って、家族と相談して明日返事をしてね」と言えるくらいの余裕を持ちましょう。

この「考える時間」を与えることで、双方の食い違いの発生をなくし、万が一の時に会社を守る盾になります。


経営者の皆様へ

「求人票は、契約書の入り口です」。

人手不足で苦しい時こそ、誠実な募集が、結果として「長く働いてくれる良い人材」との出会いを生みます。

「うちの求人票、今のままで大丈夫かな?」と少しでも不安になったら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

今のうちにズレを直しておけば、将来の大きなトラブルは必ず防げます。

貴社の誠実な経営を、全力でサポートいたします。

フェーズチェック項目
求人掲載□ 求人票の「雇用形態」「雇用期間」は実態と100%一致しているか?
□ 自社サイトや求人サイトの情報と齟齬はないか?
面接□ 求人票の内容と異なる説明をしていないか?
□ 「試用期間=有期雇用」という独自の解釈を説明なしに前提としていないか?
採用内定□ 内定通知書に「労働条件通知書」を添付しているか?
□ 内定承諾の前に、本人が条件を十分に確認する機会を与えたか?
契約締結□ 契約書の作成が労働内容の合意であることを本人に理解させているか?
□ 契約締結を急かさず、本人が内容を確認する時間を十分に確保したか?