2026. 4. 8 降給トラブルを防ぐ!就業規則の「明示」と「周知」の重要性

従業員の配置転換や役職の変更を検討される際、給与の減額が伴うこともあるかと思います。

しかし、やり方を間違えると、後々大きな法的なリスクを背負うことになりかねません。

今回は、最近の裁判例から、中小企業が特に注意すべきポイントをお伝えします。

住友不動産ベルサール事件(東京地判令5・12・14) 
部下に威圧的な言動、管理職から営業職へ降格 減額事由の明示を欠き無効

基本給を減額する際は、就業規則に具体的な「理由」と「幅」を明記する

単に「能力や実績に応じて降給することがある」という抽象的な記載だけでは、基本給の減額は法的に認められない可能性が高いのです。

たとえ社内に賃金テーブルが存在していても、それが従業員にしっかりと周知されていなければ、減額の根拠としては不十分だと判断されてしまいます。

賃金は最も重要な労働条件であり、労働者にとっての「予測可能性」が必須要件

裁判所は、会社が一方的に賃金を下げるためには、あらかじめ「どのような場合に」「どの程度下がるのか」が従業員に伝わっている必要があると考えています。

これを欠いた状態での減額は、たとえ本人に問題行動があったとしても、手続き上の不備として無効になる恐れがあります。

役職手当の廃止は有効でも、基本給(本俸)の減額が無効とされたケース

今回の事件では、部下への威圧的な言動を理由に所長を解任し、営業職へ降格させた人事自体は「妥当」とされました。

しかし、それに伴う給与減額のうち、「役職手当(ポスト手当)」のカットは規程に明確な根拠があったため有効でしたが、「基本給(本俸)」の減額は、具体的な減額幅が規程に示されておらず、賃金テーブルも周知されていなかったため、無効(差額の支払い命令)と判定されました。

今一度、自社の就業規則と賃金テーブルが「見える化」されているか確認しましょう。

「うちは昔からの慣行でやっているから大丈夫」という考えが、一番危険です。

トラブルを未然に防ぐためには、就業規則に具体的な降給事由と金額のルールを盛り込み、それを全従業員がいつでも確認できる状態にしておくことが不可欠です。

【確認項目】

 ・就業規則に基本給の変更のための「具体的な理由」と「金額幅」の明記をしていますか。

 ・就業規則の内容が周知徹底されていますか。