2026. 4.29 「善意のタダ働き」が、ついに事業になる

介護経営を守る「守り」と「攻め」の戦略
2026年4月施行社会福祉法等の改正・身寄りなし高齢者支援の制度化

少子高齢化が加速する中、現場から聞こえてくるのは「身寄りのない利用者様の対応で、本来の業務が回らない」という悲鳴です。

親族に代わって役所へ走り、入院手続きを代行し、亡くなった後の片付けまで……。

これまで「善意」という名のサービス(持ち出し)で行われてきたこれらの業務が、令和8年4月、ついに「第2種社会福祉事業」として制度化されました。

この変革は、単なる法改正ではありません。

介護経営における「最大のリスク要因」を「正当な事業」へ転換できる最大のチャンスです。

1. 「家族の代行」が法的な「事業」へ

今回の改正で、これまでグレーゾーンだった以下の支援が明確に定義されました。

  • 金銭管理・重要書類の預かり(日常生活支援)
  • 入院・入所手続きの代行・緊急連絡先引き受け(入院・入所手続き支援)
  • 葬儀・納骨・遺品整理の契約(死後事務支援)

経営者が注目すべきは、これらが「サービス」ではなく「事業」として位置付けられた点です。

つまり、「どこまでやるべきか」の境界線が法的に引かれ、対価を得る根拠が生まれたことを意味します。

2. 現場の「隠れたコスト」を利益に変える

経営者の皆様、現場で発生している「シャドーワーク」を把握していますか?

  • 「ついでに」という名の無償労働: 独居高齢者のゴミ出しや電球交換など、算定できない業務がスタッフの時間を奪い、疲弊させています。
  • 増大する事務負担: ケアマネジャーが自治体や病院との調整に追われ、本来のケアプラン作成に集中できない状況は、経営的な損失です。
  • 賠償リスクの放置: 善意で行う金銭管理や緊急連絡先の引き受けは、トラブルが起きた際にスタッフ個人や法人を破滅させかねない爆弾を抱えているのと同じです。

新制度への対応を急ぐことは、こうした「見えないコスト」を可視化し、スタッフを法的リスクから守る「盾」を作ることなのです。

3. 経営者が今すぐ打つべき「3つの布石」

業務の「見える化」で運営指導対策

計画外のサービス提供は、一歩間違えれば「指定取り消し」のリスクを孕みます。

「何を行い、何を行わないか」をデジタルの記録で徹底させ、行政へ即座に説明できる体制を整えてください。

「断る勇気」を組織でバックアップ

現場に「NO」と言わせるのは酷です。

「国の制度で決まっているから、一度会社に持ち帰ります」というマニュアルを徹底させ、組織として対応する。

これがスタッフの離職を防ぐ最強の福利厚生になります。

「自費サービス」としての収益化検討

国からの交付金だけでなく、低所得者への配慮をしつつも、一定の層には「自費サービス」として提供し、新たな収益の柱にする道も開かれています。

外部の専門機関(地域権利擁護相談支援センター等)と連携し、自社で抱え込みすぎないビジネスモデルを構築しましょう。

4. 国による費用のサポート体制

新制度に伴う費用については、自治体を通じた財政支援の仕組みが整備されます。

  • 市町村への交付金:国が新設・拡充される「身寄りのない高齢者への支援」に係る費用の一部を負担する規定が設けられています。
  • 低所得者への配慮: 経済力が乏しい高齢者等に対しては、無料または低額で支援を提供していく方針です。
  • 事業者の収益性: 中重度者を受け入れる有料老人ホームの入居者等に対する「登録施設介護支援」のような、利用者負担を求める新たな報酬体系も創設される予定です。

これは「生産性向上」のチャンスです

「身寄りなし支援」の制度化は、日本の介護を「家族の献身」から「契約に基づいたプロの仕事」へと進化させます。

この転換期を、「仕事が増える」と悲観するのか、「不透明な業務を整理し、生産性を高める好機」と捉えるのか。

その判断が、数年後の貴社の経営体力を左右します。

「スタッフが安心して働ける、リスクのない職場」を、今こそ一緒に作り上げましょう。

まずは現状の業務切り分けからはじめてはいかがでしょうか。