2026. 5. 4 従業員と会社を守る「カスハラ対策」——令和8年10月の義務化に向けた経営戦略

多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を図るための労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)
労働施策総合推進法(カスハラ対策)R8.10.1より

カスハラ対策は、これからの時代の「守りの経営」のカナメ

令和8年(2026年)10月より、労働施策総合推進法の改正に伴い、すべての事業主に「カスタマーハラスメント(カスハラ)防止対策」が義務づけられます。

これは単に法律を守るための手続きではありません。

「お客様だから」という理由で、理不尽な言動に晒される従業員を放置せず、組織として守る姿勢を明確にすることです。

適切なカスハラ対策を講じることは、従業員の離職を防ぎ、会社の社会的信用を高める「攻めの経営戦略」でもあります。

なぜ今、対策が「義務」として求められているのか

背景には、過剰な要求や暴言によって心身を病む労働者の急増があります。

これまで多くの現場では、「お客様に怒鳴られても、従業員に我慢させてしまう」という状況がありました。

しかし、対策を放置することは経営上大きなリスクを伴います。

  1. 人材の流出: 「守ってくれない会社」に優秀な人は残りません。
  2. 法的リスク: 安全配慮義務違反として、会社が損害賠償を請求される可能性があります。
  3. 業務効率の低下: 担当者が一人で問題を抱え込むと、現場の判断が遅れ、サービス全体の質が低下します。

国がルールを整えた今、対策に取り組むことは、これらのリスクを排除し、健全な職場環境を作る絶好の機会なのです。

9月末までに進めるべき「3つの柱」

具体的に、会社として何を準備すべきか。優先順位の高い3つのポイントを挙げます。

1. 経営者による「ハラスメント許しません」宣言

まずはトップが、朝礼や会議、社内文書などを通じて「従業員を大切にする。理不尽なカスハラには組織で対応する」と宣言することから始まります。

 ✅ 朝礼や会議で「困ったお客様の対応は一人でしなくていい」と伝える
 ✅ 「カスハラ・ハラスメントを許しません」とポスターや文書で社内外に掲示する
 ✅ 就業規則に「ハラスメント行為者には厳正に対処する」と明記する

2. 相談体制の構築と周知

「困ったときに誰に言えばいいか」を明確にします。

 ✅ 「困ったら○○さん(または社長)に言ってください」という担当者を決めて周知する
 ✅ 「相談しても秘密は守る」「相談したことで不利益は与えない」とルールに明示する
 ✅ 小さな会社なら、社長自身が「何でも話して」と伝えるだけでも十分な安心感になります

3. 「現場で慌てない」ための対応マニュアル化

「正当なご意見」と「カスハラ」の境界線を整理し、現場の初動を決めます。

 ✅ 「担当者一人で対応しない」ルールを徹底する
 ✅ 「話が通じない場合は警察・弁護士・社労士に相談する」選択肢を共有しておく
 ✅ クレームの記録(日時・内容・対応者)を残す習慣をつける

「守る経営」への最初の一歩

「何から始めたらいいか分からない」と難しく考える必要はありません。

まずは方針を決めることから始めれば、余裕を持って10月の施行を迎えられます。

従業員が安心して働ける環境を整えることは、採用難の時代において最強の武器になります。

もともと「従業員を大切にしたい」という想いをお持ちの経営者の皆様、あとはその想いを制度として「形」にするだけです。

「今から9月末まで」の逆算スケジュール

焦る必要はありません。

この流れで動けば、余裕を持って10月を迎えられます。

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時期の目安やること・ゴール
今すぐ〜6月  カスハラ・ハラスメントについて社内で話し合い、方針を決める。
社労士や労働局に気軽に相談してみる。
7月〜8月就業規則を改訂する。
相談窓口の担当者を決め、従業員へ周知する。
ポスター・掲示物を準備する。
9月  全従業員へ説明・周知を行い、10月の施行に合わせて正式スタート!準備万全で新しいルールを迎えましょう。