2026. 6. 22 2026年7月1日施行!障害者雇用「履行義務」の徹底解説と除外率制度の重要ポイント

障害者の法定雇用率引き上げと支援策の強化について(厚生労働省)
https://www.jeed.go.jp/disability/q2k4vk000002t1yo-att/q2k4vk0000055t8y.pdf

令和8年(2026年)7月1日から、民間企業の法定雇用率が引き上げられます。

今回の改正は、単なる数値の変更にとどまらず、これまで雇用義務がなかった規模の企業も対象に含める「義務の拡大」を意味します。

今回は、企業が果たすべき履行義務に焦点を当て、特に計算の鍵となる除外率制度の運用を含め、解説します。


1. 7月1日より雇用義務は「37.5人以上」の企業へ拡大

今回の改正の核心は、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられることです。

これにより、障害者を1人以上雇用する法的義務が生じる企業の範囲が、これまでの常用労働者40.0人以上から、「37.5人以上」へと引き下げられます。

自社の常用労働者数を正確に把握し、義務の有無を再確認することが最優先事項です。


2. 共生社会実現のための法的拘束力と報告義務

なぜ、企業はこの義務を厳格に履行しなければならないのでしょうか。

それは、障害の有無にかかわらず誰もが職業を通じて社会参加できる「共生社会」の実現が、単なる理念ではなく、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく法的義務だからです。

国は企業がこの義務を履行しているかを把握するため、以下の仕組みを設けています。

  • 障害者雇用状況報告: 対象事業主は、毎年6月1日時点の雇用状況をハローワークに報告する義務があります。
  • 障害者雇用推進者の選任: 雇用の促進と継続を図るために「障害者雇用推進者」を選任するよう努めなければなりません。
  • 納付金制度によるペナルティ: 常用労働者100人超の企業で、雇用率が未達成の場合、不足1人につき月額50,000円の「障害者雇用納付金」を徴収されるという経済的負担が生じます。 

履行義務を怠った場合、ハローワークによる雇入れ計画の作成命令や指導が行われ、改善が見られない場合には企業名の公表という社会的信用の失墜につながるリスクも伴います。


3. 除外率制度を反映した「正しい雇用義務人数」の算定

実務上、自社の義務人数を計算する際に欠かせないのが「除外率制度」の理解です。

除外率制度とは何か

障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種(除外率設定業種)において、計算の基礎となる常用労働者数から、一定の割合を控除できる制度です。これは、特定業種の雇用義務を軽減するために設けられています。

除外率の段階的縮小と最新の数値(令和7年4月改定)

ノーマライゼーションの観点から、この制度は将来的に廃止されることが決まっており、令和7年4月1日より、各業種の除外率が一律10ポイント引き下げられgています。

令和8年6月現在、適用されている主な業種の除外率は以下の通りです(一部抜粋):

業種除外率
非鉄金属第一次製錬・精製業、貨物運送取扱業5%
建設業、鉄鋼業、道路貨物運送業、郵便業10%
港湾運送業、警備業15%
鉄道業、医療業、高等教育機関、介護老人保健施設、介護医療院20%
金属鉱業、児童福祉事業30%
道路旅客運送業、小学校45%
幼稚園、幼保連携型認定こども園50%
船員等による船舶運航等の事業70%

履行義務人数の計算シミュレーション

7月1日以降、常用労働者数1,000人の建設業(除外率10%)を例に計算すると以下のようになります。

1.除外後の労働者数: 1,000人 - (1,000人 × 10%) = 900人
2.雇用義務人数: 900人 × 2.7% = 24.3人(小数点以下切り捨てで24人)

今後の注意:令和9年4月の「再引き下げ」

企業の皆様が長期的な計画を立てる上で忘れてはならないのが、令和9年(2027年)4月にさらなる除外率の10ポイント引き下げが予定されている点です。

今回の7月の雇用率2.7%への引き上げと、来年4月の除外率引き下げの「ダブルパンチ」により、除外率設定業種の企業は、他業種に比べても急速に雇用義務人数が増加することになります。


4. 改正は「法順守」の再確認と組織基盤強化の好機

2026年7月1日、法定雇用率は2.7%に上がり、対象企業は「従業員37.5人以上」に拡大されます。

企業にとって、この履行義務は避けて通れない法的責任です。しかし、これを単なる「負担」や「罰則の回避」と捉えるべきではありません。

  • 6月1日時点の報告内容を精査する: 来年以降、新雇用率に基づき自社がどのような立ち位置になるか、今一度現状を客観視してください。
  • 除外率の変動を織り込む: 特に令和9年4月の再引き下げを見越し、中長期的な採用・配置計画を策定してください。
  • 多様なカウント制度を理解する: 週20時間以上30時間未満の精神障害者の1.0人カウント特例や、週10時間以上20時間未満の特定短時間労働者の0.5人算定などを活用し、柔軟な雇用形態を検討することも重要です。

適正な労務管理を行い、履行義務を果たすことは、現代の企業経営における「ガバナンス」の根幹です。

7月1日の施行に向け、自社の義務範囲と計算方法を今一度徹底的に見直してください。