2026. 6. 26 「事故は減ったが、大怪我が増えた」――労働災害データが突きつける、あなたの会社の「見えないリスク」
令和7年労働災害動向調査(事業所調査(事業所規模100人以上)及び総合工事業調査)の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/25
「うちは長年、大きな労災なんて起きていないから大丈夫」
「安全対策は現場に任せているから」
もし、あなたがそう思っているなら、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
どれほど素晴らしい事業計画も、たった一度の「深刻な労働災害」で水の泡になりかねません。
経営者として、これからの時代の「守り」に、少しだけ戦略的なメスを入れてみませんか?
先日、厚生労働省より「令和7年(2025年)労働災害動向調査」が公表されました。
この数字、ただの統計資料として読み流すにはあまりに「痛い」教訓が隠されています。
今日は、このデータを経営戦略のヒントとして読み解いていきましょう。
「数」は減っても「重さ」は増している?
まず、全体的な数字をざっくり見てみましょう。
- 事故の発生頻度(度数率)は、少し減りました。
- しかし、1件あたりの「重症度(労働損失日数)」は、逆に増えています。
これは何を意味するのでしょうか。
現場の皆さんの意識向上によって、小さなケガは防げるようになったかもしれません。
しかし、ひとたび事故が起きると、それが長期療養や、最悪の場合は後遺症を残すような「取り返しのつかない大事故」につながっているのです。
「軽微な事故は減ったから安心」という油断こそが、今、最大の経営リスクかもしれません。
「規模」が小さいほど、リスクは高いという現実
今回の調査で最も浮き彫りになったのは、事業規模による「安全格差」です。
- 常用労働者1,000人以上の大企業:度数率 0.63
- 常用労働者100~299人の中堅・中小企業:度数率 2.69
驚くことに、100〜299人規模の企業は、大企業に比べて約4.2倍もの頻度で事故が起きています。
大企業には組織的な安全体制やDX化された安全対策がありますが、中小規模の企業では「生産性を優先するあまり、安全が後回し」になりがちなのかもしれません。
しかし、一度の重大事故で失われる社会的信用や賠償リスクを考えれば、安全対策への投資は、決して「コスト」ではなく、最強の「危機管理」なのです。
3つの「改善スイッチ」
では、明日から何を変えればよいのでしょうか。現場を疲弊させずにできる、効果的なアクションを提案します。
1. 「不休災害(ヒヤリハット)」を宝の山にする
今回の調査では、休業に至らない小さな「不休災害」が増加傾向にあります。
これらは「休んでいないから大丈夫」というサインではありません。
むしろ、「重大事故への予兆」と捉えてください。
現場が「報告すると怒られる」と感じる組織では、小さな予兆は闇に葬られます。
報告したことを「会社の安全を救ったファインプレー」として称賛する文化に変えるだけで、景色はガラリと変わります。
2. 高年齢労働者の「心と身体」に寄り添う
労働損失日数が増えている背景には、労働力の高齢化も関係しています。
若手の頃と同じ感覚で作業をさせていては、転倒や動作ミスを防げません。
段差の解消や防滑靴の支給といった物理的な環境整備は、実は「誰にとっても働きやすい職場」づくりへの近道です。
3. 「派遣・出向者」を含めた安全管理を
「自社の正社員ではないから」と、安全教育の対象から外していませんか?
現場で働くすべての人が、貴社の大切な人的資本です。
一貫した安全基準を徹底することこそが、企業のブランド力を高める「人的資本経営」の第一歩です。
最後に:安全は「経営の最優先課題」です
労働災害は、従業員の方とそのご家族の人生を狂わせるだけでなく、企業の存立基盤さえも揺るがします。
今回のデータが伝えているのは、「見かけの数字に惑わされず、見えないリスクに先手を打て」というメッセージです。
安全管理を総務や現場任せにせず、ぜひ経営者であるあなた自身の「経営課題」として捉えてみてください。
貴社の現場では、最近「ヒヤリとした」報告や、小さな不注意によるミスについて、どのようなコミュニケーションが交わされていますか?
「自社の今の体制で本当に大丈夫だろうか?」と少しでも不安を感じたら、いつでも私たち社会保険労務士にご相談ください。
データという根拠に基づき、貴社を守り、成長させるための「攻めの安全戦略」を一緒に考えさせていただきます。
共に、従業員が安心して笑顔で働ける職場を創っていきましょう。



